「はい、じつは、冬が来る前に一家中の服の色を、少しずつかえなければなりません。
だから、ドンタくんにお願いがあるんです。
この先のつり橋を渡ったところに、白いヒゲをのばした、かりの名人がすんでいるでしょう。
てっぽうをかついだ、かりのじいさんに会っても、
私たち一家に会ったことはないしょにしてください。
そうでないと、ズドンとやられてしまいますから、子どもづれなのできがきでないんです。
雪がつもるまでいちばん目だちますから、お願いしましたよ。ドンタくん。」
といいのこして、野ウサギ一家は、ぴょこん、ぴょこん、ぴょこんと三段とびのようにして、
スギの木とスギの木の間を通って、どこかに行ってしまいました。
そうか、この先にかりのじいさんがすんでいるのか、どんなじいさんなのか、
不思議になって、ドンタは早くあってみたくなり、ぐんぐん山道をかけあしでおりていきました。
――おっと、こりゃ、あぶない――。ドンタは急ぎすぎて、小石につまづいてしまいました。
――おお、いてえ――。目から火が出るほど痛かったので、
ドンタは大きな声をはりあげてしまいました。