2012年10月6日土曜日

絵本『あゆちゃんのお顔』より 15



「はい、じつは、冬が来る前に一家中の服の色を、少しずつかえなければなりません。
 だから、ドンタくんにお願いがあるんです。
 この先のつり橋を渡ったところに、白いヒゲをのばした、かりの名人がすんでいるでしょう。
 てっぽうをかついだ、かりのじいさんに会っても、
 私たち一家に会ったことはないしょにしてください。
 そうでないと、ズドンとやられてしまいますから、子どもづれなのできがきでないんです。
 雪がつもるまでいちばん目だちますから、お願いしましたよ。ドンタくん。」

といいのこして、野ウサギ一家は、ぴょこん、ぴょこん、ぴょこんと三段とびのようにして、
スギの木とスギの木の間を通って、どこかに行ってしまいました。

そうか、この先にかりのじいさんがすんでいるのか、どんなじいさんなのか、
不思議になって、ドンタは早くあってみたくなり、ぐんぐん山道をかけあしでおりていきました。

――おっと、こりゃ、あぶない――。ドンタは急ぎすぎて、小石につまづいてしまいました。
――おお、いてえ――。目から火が出るほど痛かったので、
ドンタは大きな声をはりあげてしまいました。