2012年9月30日日曜日

絵本『あゆちゃんのお顔』より 13



次の朝、ドンタは里にお姉さんをたずねる旅に出ることになりました。
おかあさんは、ドンタにおむすびを作って、せなかにくくりつけてくれました。

「たびの途中、いろいろなことがあろうが、男の子なのだから、
 がんばって行くのだぞ――。」

とおとうさんとおかあさんは、ドンタをはげましました。

「いってきます。」

元気のいい声で、ドングリ山の家をあとにしました。

もう、ルンルン気分です。

すこしさか道をくだった、ナラの木の下で、カサ、カサと音がしました。
いったいなんだろうと、ドンタはジーッとみていると、なんと、なんと、
大きいからだをした、青ダイショウくんでした。

「どうしたの、もうすぐ雪がふってくるのに、まだ、青ダイショウくんは、
 土の中に入らないのかね。」

「はい、じつは私もそう思ったのですが、からだが長くて、大きいものだから、
 なかなかいい穴がみつかりませんので。」

と、ぼそぼそ声で、青ダイショウくんはいいました。

2012年9月27日木曜日

絵本『あゆちゃんのお顔』より 12



ある晴れた、秋も終わりに近い日。
ドンタ一家に、キツツキくんが手紙を運んできてくれたのです。

「ドンタ、元気ですか、山はもうすぐ白い粉雪が降る日も近いでしょう。
 お姉さんのすんでいる里は、まだ、まだ、あったかいです。
 雪が降る前に、ドンタも一度里に来てみませんか。」

と書いてあったのです。

ふっと、ドンタはおよめに行ったお姉さんに会いたくなりました。

「おとうさん、おかあさん、ぼく、里に行ってもいいですか。」

すると、おとうさんはしばらく黙っていましたが、

「そうだねえ。里までは長い長い旅だけど、ドンタも一人前の男の子だから、
 旅をさせるのもよかろうな――かあさん。」

「ほんとなら、三人で行きたいのだけど、おとうさんとここに残らねば、
 来年、このドングリ林がさびしくなるでしょ。」

とおかあさんは、一人ごとをいっていました。

2012年9月24日月曜日

絵本『あゆちゃんのお顔』より 11



ドングリ、ドンタの旅

2012年9月21日金曜日

絵本『あゆちゃんのお顔』より 10




「少しは静かにしなさい。」

おかあさんの声が聞こえました。
さきほど小人さんと長い間、オシャベリしたので、つかれました。
おかあさんのこもり歌で少しおやすみです。

何ヶ月かすぎたある日、
あゆちゃんは、おかあさんのおなかから生まれてきました。
目が大きくて、まつげが長くて、オチョボ口で、
よく聞こえる耳と、太いまゆ、みんな小人さんのプレゼントです。

きらいだった低いはなは、なぜか、だいすきになりました。

それは、あゆちゃんをうんでくれたおかあさんのはなに、そっくりだったからです。

あゆちゃんは、やっぱりかわいいふつうの女の子でした。

2012年9月18日火曜日

絵本『あゆちゃんのお顔』より 9



「小人さん、おねがいがあります。
 おはなはやっぱり、おかあさんからもらったまんまにしたいのです。」

「そうですね、あゆちゃんのいう通りにしましょう。」

と小人さんがいってくれました。

「あら、あら、もうこんな時間になったのね。十時までに帰らないと、
 頭の白い羽根が赤く変わってしまいますから。」

と不思議なことばを残して、小人さんはスーッと、さっき入ってきた、
おかあさんのおへそから出て行ってしまいました。

小人さんは、黄色い手かがみを忘れていきました。手かがみで、そっと、そっと、
自分の顔をのぞいてみると、あら、おはながとても低くって、丸いのに気がつきました。
やっぱり高い方がよかったなあ、と思うと急に涙が出てきました。

くやしくって、くやしくって、おかあさんのおなかを、足で、バタ、バタ、
けりながら大声で泣き出しました。
おかあさんは、あまりの痛さにビックリしました。

2012年9月15日土曜日

絵本『あゆちゃんのお顔』より 8



「あれ、小人さん、お口はもっと大きい方がよかったのに。」

とあゆちゃんがいうと、

「わがままいってはいけません。
 あゆちゃんがステキなレディーになるように小さな口にしてあげたのです。」

と小人さんはいいました。

パッチリ目に、長いまつげ、黒いまゆ、それにお口もついたし、
よく聞こえる耳もつけてもらったので、早く自分の顔がみたくなり、
鏡をかしてくださいといいました。

すると小人さんは、

「まってください。まだ残っているものがありますよ。一番大事なおはながついておりません。
 おはなは高い方がいいですか、ひくい方がいいですか。」

ゆうべ、おかあさんとおとうさんが、『生まれてくる子は、おはなが高いといいわね。』
という話をしていたので、

「小人さん、うんと高いのにしてください。」

とあゆちゃんはいいました。

「はい、よくわかりました。」

小人さんが高いはなをつけてくれようとしたとき、あゆちゃんの心が変わりました。

2012年9月12日水曜日

絵本『あゆちゃんのお顔』より 7



と、おかあさんが友達と話をしていたのをおぼえていたので、
小人さんにすぐ返事が出来たのです。

「この目は本当に、よく、どんなものでも、美しく見えますから。」

と小人さんは一人ごとをいってつけてくれました。

「では、目の上につける、まつげはどうしましょうか。
 長い方がいいですか、短い方がいいですか。」

ちょっと、あゆちゃんはこまりました。しばらく、考えこんで、そうだ、
せっかくの大きい目に短いまつげだと風が吹いて目にゴミが入ったときこまるので、
長いまつげにしてもらうことにしました。

小人さんは長い長いまつげを、チョッキン、チョッキン、ハサミで切ってつけてくれました。

「さあ、さあ、次に進みましょうか。」

小人さんは、胸にさげたペンダントの時計を少し気にしながら、

「お口はどうしましょうか。」

と聞きました。

お口がないと、おかあさんのようにピンクの口紅もつけられないし、
おいしいものも食べられません。
それに、だいすきなオシャベリもできません。

「小人さん、うんとかわいい口にしてください。」

といいました。

2012年9月9日日曜日

絵本『あゆちゃんのお顔』より 6

 

とやさしくつけてくれました。
まゆげってどんなものなのかそっと、あゆちゃんは両手でふれてみました。
少しゴソゴソしてへんなきもちです。でもチョッピリ、あんしんもしました。

「それから、それから、お耳はどうしますか。」

そうだ、どんな遠くの音でも、やさしいおかあさんの声でもききとれますように、

「よくきこえる大きい耳にしてください。」

小人さんは、そんなあゆちゃんの心のなかまで分かったのか、笑顔で、

「はい、はい、わかりました。この耳はとてもりっぱで、
 どんな音でもきこえます。ロバの耳よりりっぱです。」

といってつけてくれました。
あゆちゃんは、ロバの耳のお話は、
おかあさんがいつも読んでくれる本でよくしっていました。とてもうれしくなりました。

「次に目はどうしましょうか。」

と小人さんが聞きました。

「はい、パッチリ大きい目にしてください。」

と、いいました。

「目の大きい子が生まれてくるように願ってますのよ。」

2012年9月6日木曜日

絵本『あゆちゃんのお顔』より 5



「でもね小人さん、あゆちゃんはおかあさんからいいところだけいただいて、
 お顔はできているのでいりません。」

「それはすばらしいですね。でもおかあさんよりもっともっと、
 ステキなお顔に作ってさしあげましょう。」

あゆちゃんは『ステキなお顔』といわれたので、
どうしたらよいのかしばらく考えこんでいました。

「さあ、さあ、あゆちゃん。
 お風邪をひくといけませんから早くお顔作りにかかりましょうね。
 一番目はまゆげにしましょうか。まゆげは黒くて太いのがいいですか、
 それともうすくて細いのがいいですか。」

あゆちゃんは、まゆげってなんだろう。あった方がいいのかな、
ない方がいいのかな、とまよっていました。

そうだ、おかあさんに聞いてみようと思いました。
トン、トン、トン。おかあさんのおなかをノックしたのに返事がありません。
おかあさんは、さきほどおいしいケーキを食べたあとなので、
スヤ、スヤ、きもちよさそうにおひるね中でした。
あゆちゃんはこまったなあと思いました。

すると小人さんは、

「おまかせください。やっぱり黒くて太いまゆにしましょう。」

2012年9月3日月曜日

絵本『あゆちゃんのお顔』より 4



ふわふわあったか、おかあさんのおなかの中で、
あゆちゃんはおねむりしていました。

「ごめんください、ごめんください。」

という声がして、おかあさんのおへそから、
頭に白い羽根をつけたかわいい小人さんが入ってきました。
きれいな手カゴの中にはたくさんのお顔の道具が入れてありました。

あゆちゃんは、ビックリして目がさめました。

「あなたはどなたですか。」

「はい、私は美しい花園から女王様のお使いでやってまいりました。
 少しもあやしいものではありませんよ。
 おかあさんのおなかの中でおりこうにしている良い子のために、
 ステキなお顔のプレゼントをもって、流れ星にのってやってきました。」

と小人さんはキラ、キラ、光る美しい目であゆちゃんに語りかけたのです。